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Life Changer(裏)7 [小説]

第二章4




思った通り下河原は自分が人として見られてないということに少なからずショックを受けているようだ。

このまま自分の陥った状況を分析させて、若干の鬱状態を引き起こさせる方向で進めよう。

「思考パターンセンサーによると、今年の春からあなたの思考パターンが揺らぎ始めていますが、その時期に何か原因となる出来事が有ったのではないでしょうか。覚えていませんか。」

下河原の元上司が亡くなったことがきっかけのようだ。身近な人の死によって、自己の存在意義を問うということか。

下河原の場合は日常生活の中で意識に上らないような違和感が積み重なっていて、それが元上司の死によって一気に沸き上がってきたという状況のようだ。

ありがちな状況で、簡単なカウンセリングで解消する事例だと思う。

しかし、今回のプロジェクトではもう少し下河原と直接接触している方が良いと思うので、今回は少し突き放した対応をすることにした。

「今回はここまでにしましょうか。じっくり考えましょう。幸い今のところ危険なレベルまでは到達していないので、通常の生活には大きな支障がないと思います。これから毎週足を運んでいただきたいのですがいかがでしょう。もちろん、職場には秘密で対応させていただきますので、ご安心ください。」

今後の対応を簡単に説明してカウンセリングを終えた。

オペレーティングルームに戻ってきた遠山は、部屋に入るなり思考パターンセンサーのモニターをチェックし始めた。

「カウンセリング中の下河原の思考パターンはどうだった?」

「若干動揺してましたが、総じて安定してました。危険な兆候は見られません。」

サブリーダーの竹内が遠山の問いに答えた。

「そうか、会ってみた感触も一時期の乱れが解消していて、カウンセリングの必要はないよだった。」

「そのようですね、今回のオペレーションがなければ数週間で問題なく以前以上のレベルで仕事ができそうです。次回の判定を待たずにBランクへの昇格が可能でしょうね。」

「それでも、今回のオペレーションのためにもう少し不安定な状況を維持しなければならない。若干、システム不信のフィードバックを行おう。これで、下河原は自分の存在に対する不安を感じることだろう。少し、その状況を保ってもらおう。」

下河原につけてある保安要員からは異常は報告されていないので、大きな問題なく進行しているようだ。計画通りならばあと2週間くらいで決着が付くだろう。



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