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Life Changer(裏)1 [小説]

第1章1



「ターゲット確認しました。崖に向かっているようです。」

「そうか、センサーでは危険レベル3程度なので大丈夫だと思うが。引き続き保安要員には注意するように伝えてくれ。」

「了解です。引き続きターゲット追跡。慎重にな。」

「それから、Ruriはどうだ。」

「やはり崖に向かってますが、あまり具合が良くないようでフラフラしてます。」

「引き続き注視せよ。危険状況が発生した場合にはRuriとの接触を許可する。非常時には各自で判断するよう。」

「了解。E1時接触許可。各自で判断せよ。」

ここは、勤労省 労働者健康管理センター。勤労省ビルの2階の奥。オペレーティングルームの一つである。

10数台のモニターがある男の思考パターンセンサーを分析している。

指揮官の遠山の前には2冊のファイルが置かれている。

この春思考パターンに自殺可能性レベル3が発見された下河原悟とアーティストのRuriの2人に関するレポートだ。

このオペレーションでは不治の病が発見されたRuriの延命を実現することが目的だ。

通常はオペレーティング対象とはならない自殺可能性レベル3の下河原がオペレーション対象となっているのはRuriのせいらしい。

アーティストは貴重な階級だが病気で寿命が迫っているものの延命を計画するなど前例がない。このRuriというアーティスト、よほど重要な人物のようだが詳細は一切知らされていない。大臣クラスからの直接指令で今回のオペレーションは動いているので、他のチームにも極秘と命令されている。

オペレーションが開始されてから2ヶ月下河原とRuriの監視を続けてきた。そして、今日初めて二人は接触する可能性が高そうだ。同じ方向に向かっているので確実に接触するだろうが、どのような形になるのかは予測不可能だ。

Ruriの体調が思わしくないようなので最悪、接触を回避して救出を考えなければならない。Ruriの命が最優先だ。

接触後のオペレーションパターンも状況に応じて自動的に選択されるというリアルタイムオペレーションのため一瞬の判断が大切だ。いくつかの選択肢は遠山の頭の中に入っているが全く予測しない状況になったときでも冷静に対処しなければ。

遠山は入省して18年、昨年B2クラスに昇格しオペレーションリーダーを務めている。通常は自殺防止のオペレーションで行動監視とカウンセリングの組み合わせで自殺可能性レベルを2以下に低減させることが目的だが、今回は初めてのオペレーションで少し戸惑っているところもある。

思考パターンセンサーのフィードバック機能も初めて本格的に利用する事になる。オペレーションリーダーになるときの研修でフィードバック機能活用のレクチャーも受けているが実際に利用して使えるものなのか疑問を感じる点もある。その点も注意しなければ・・・。今回のオペレーションは失敗するわけにはいかない。

「ターゲット、危険状況から脱しました。崖を離れます。」

「Ruriに異変があったようです。意識を失って道ばたに倒れているとのことです。ただ、ターゲットが近づいているので干渉せず監視を続けるとのことです。」

「よし、いい判断だ。ターゲットとRuriの接触間での時間はどれくらいだ。」

「すぐです、もう1分かからないでしょう。」

「ターゲット。Ruriに接触しました。救急車を呼んでいます。」

いよいよ始まった。

遠山は心なしか口元をひきつらせて報告に頷いた。

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