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Life Changer1 [小説]

プロローグ


切り立った崖の上に30代と思われる男が立っている。

崖の下を覗いたとたん軽い目眩に襲われた男は、崖の縁から二三歩後ずさった。

「やっぱりだめだ。怖くてできない。」

男は小さくつぶやいた。

男は崖へ続く道を町の方へと力なくうなだれ歩き始めた。

背中を丸めて足を引きずるようにして歩く姿に打ちひしがれた様子が現れている。

彼は何に打ちひしがれたのであろうか。

彼の名前は、下河原悟。年齢は35歳。
マルワシティの出身である。

彼の階級はC1。通常労働者階級から管理労働者への過渡期の階級だ。

一番壁にぶつかりやすい時期である。

この世界では、人はA~Eまでの5階級に分類される。それぞれの階級はさらに3段階に分かれており。全15階級のどれかに必ず分類されている。

生まれたときはどの人間もE3から始まる。その意味では平等だ。

ただし、そこからはすべて平等というわけにはいかない。両親の階級によって受けられる教育がある程度決まってくる為に上っていく速度に明らかな違いがみられる。

こればかりは神が与えたもうた環境ということで、まさに神の思し召しというやつかもしれない。

通常の人であれば最終的にB1ランクくらいまではあがることができるであろう。

早ければ30前後でBランクの上位となる人間もわずかながら存在する。

Aランクに上がることのできる人間は全体のおよそ5%。俗に言うスーパーエリートということである。

スーパーエリートになれる人間はやはり、どこかほかの人間とは違うところがあるようだ。

他人への接し方、仕事に対する真剣さ、はもちろん何よりも自らを律する姿勢が明らかに違うのである。

この階級からすれば30前後でC1クラスというのは平均より少し早いくらいであろうか。

彼が自ら命を絶とうと思い至った理由は、おいおい明らかになるであろう。

町へ続く道は細く、周りは木々が生い茂って薄暗い。すれ違う人もいない道を歩く彼の前方に白い影が横たわっていた。

不思議に思い近づいていくと、それは若い女性のようだ。自分が死ぬことを考えていたにも関わらず、彼は彼女のそばに駆け寄り、状態を確認した。

彼女は気を失っていたが、命に別状はないようだ。

「なんで、こんなとこに・・・。」

このまま放ってはおけないので、携帯電話で救急車を呼ぶことにした。

これが始まりだった・・・・

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