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満員電車6 [小説]

6.しげる(2)


まずいな。

今日は隣の男の人と後ろの女性が私に興味を持ってしまったようだ。

興味を持たれてしまうと一気にチャンネルが合ってしまって、先方の考えが筒抜けになってしまう。

知りたくもないことが流れてきてしまうのだ。

私が、なるべく他の人に接触しないようにしている様子が気になっているようだ。

男の人は私のことをいい人だと勘違いしているようだ。

周りとの接触を避ける私の態度を周りの人のことを考えてのことだと採ってくれている。

私はそんなに良い人間ではない。

唯単に人の意識が流れ込んでくる状況を極力避けているだけだ。

複数の人の意識が流れ込んでくると、何が何だかわからなくなるので、できるだけ少ない接触でやり過ごせるように努力している。

接触テレパスと言っても服の上からなので、チャンネルが合わなければほとんど人の意識は入ってこない。

だから、接触はできるだけ少なめに・・・。

それだけだ。

後ろの女性は私のことを潔癖症かと疑っている。

顔でそんなことはないと思ったらしいが、ひどい話だ。

潔癖症に顔は関係ない。

ともあれ、私の状況は潔癖症に似たところもあるので、案外的を得ているのかな?

と、この二人の思考はばっちりシンクロしてしまった。

こうなると、接触していなくても読めてしまう。

もちろん、少し意識を向けなければ完全には読めないけれど。

途中の駅でいったん車外に出て少し離れた位置に納まったが、やっぱり二人の意識は流れ込んでくる。

まあ、もう少しで乗換駅に着くので、もう少しのガマンだ。

二人とも私に興味を持っているが、私がテレパスだと言うことには気づいていないみたいだし(当たり前か。)。

このまま、何事もなく乗換駅に着いてくれれば・・・。



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