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或る男の半生31 (完) [小説]

3.ひろみ(16)


ひろみの手紙は仙台の消印。

仙台にいたんだ・・・。


あのとき・・・ どこかから俺のことを見ていたんだ・・・・

結局ひろみは戻ってはこない。


分かっていたことだが・・・・


全てが・・・ 始まりから真実がなかったことを・・・・


両親は既に諦めているので、この手紙を見せることはしなかった。

警察にも・・・被害届は出していない。


勝手な思いだが、このままひろみが幸せに暮らしてくれるなら・・・


本当は会ってそのことを伝えたいのだが、会えば未練も出るので・・・・


こちらから連絡する術もないし・・・


警察におびえながら暮らすのは大変だろうな・・・


おびえなくて良いと知らせてやりたいんだが・・・


ともかく、この手紙で俺は前に進むことにした。


週末にひろみを探すことをやめ、両親と過ごすことにした。

なんだかんだ言って一番の被害者は俺の両親だ。

北海道から引っ張り出されて、知り合いのいないところで暮らさなきゃならないなんて・・・

弟も週末にはよく訪れてくれるようになった。

これで、両親も寂しさを紛らわすことができるだろう。


俺の失敗の影響は弟たちの心に大きなキズを与えたようだ。


北海道で俺とひろみをかくまってくれた2番目の弟は、完全に女性不信に陥って、結局所帯を持つことはなかった。

両年と呼ばれる時期を迎えても一人暮らしだ・・・


末の弟は、その後両親と北海道に帰ることになるのだが50を過ぎて迎えた嫁が浪費家で、大量の借金を負わされ自己破産。

その嫁とは離婚。


二人の弟には悪いことをした。

こんな体験を兄貴がしていたら、女性を信じられなくなるよな・・・


俺の人生のハプニングはまだ終わらない。

これから結婚することになるのだが、その嫁が・・・


両親との折り合いが悪く、両親を北海道に帰すことになってしまう。


俺の力が及ばなかったと言うことだ。


俺は、女性不信になることはなかったが、女性に逆らえなくなってしまったのだ。

女性が自分から離れていくことが怖い。



ひろみを失った時の喪失感に対する恐怖から・・・。


俺は両親の死に目に会えなかった。

嫁が許してくれなかったのだ。


それでも、今は子供がいることが救いだ。

嫁との間には3人の子供をもうけることができた。


両親には申し訳ないと思うが、この子たちには俺しかいない。

俺が守ってやらなければ・・・


ひろみがいなくなってから二十年以上経つ。

あのときのひろみも俺と同じような感情を持っていたのか?


俺が守ってやらねば・・・・



ひろみと子供は、幸せに暮らしているのだろうか・・・・・


後悔はない。


そのことだけが、少し心残りだ。


(完)



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