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或る男の半生27 [小説]

3.ひろみ(12)


市議の心当たりはひろみの前に働いていた店だった。

そんなにわかり易いところに居るわけはないと思いながら、何かヒントになることはないかと訪ねてみた。

ひろみは郊外の店で働いていたので、1件訪問すると半日がかりだ。

名古屋近郊の店は働いていた期間も短かったらしく、ひろみのことを覚えている人間はいなかった。

そんな中で、岐阜の大垣の店でひろみと一緒に働いていた女性を見つけた。

ちょうどひろみが水商売から足を洗おうかという時期だったらしく、よく相談を持ちかけられたということだった。

その人から、信じられないことを聞いた。

ひろみに子供が居たというのだ。

ひろみはほかの仲間には内緒にしていたが、彼女にだけはうちあけたそうだ。


なんだ?


子供?


そんな話は聞いたことがない。俺にその話をしなかったということは・・・・

はじめから騙すつもりだったというひろみの置手紙の話は本当だということか・・・


子供が居たなら最初から話してくれれば何の問題もなかったのに・・・・


そうか・・・・ 神埼がその父親か!

それで、ひろみをそそのかして詐欺をさせていたのか!


俺はそれにまんまと引っかかってしまったってわけだ。 情けない。


彼女に話によるとひろみは彼女にも子供の父親が誰かを言わなかったらしい。

その男から逃げているという話もしていたようだ。


逃げていた? ということは父親は土方?


ひろみは子供を連れて土方から逃げていたのか?でも、俺と出会った時には子供は居なかった。

見つかったんだ。土方に・・・。

それで子供を取り上げられて、土方の言いなりに・・・。

でも、騙すにしてもなんで俺なんだ?いかにも金を持っていそうにないと思うが・・・・。


この話を聞いてなんとなく理由は想像できたが、本当のところはわからない。

やっぱり見つけ出して、あって話を聞かなければ・・・・。


彼女には連絡を取っていなかったらしく、最近の動向はまったくわからないとのことだった。


居場所に関しては市議の心当たりはさっぱりだったが、子供が居たなんて・・・。



ひろみがいなくなって3ヶ月。俺はひろみに聞いた話をもとに彼女の足跡をたどってみることにした。





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