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或る男の半生23 [小説]

3.ひろみ(8)


出てきたのは俺と同じくらいの年格好の男だ。

「どちら様ですか。」

「いや、あの・・・。」

「えっ?何?」

「いや、どう説明すればいいのか・・・。」

「何ですか。あなたたちは。」

「あの、その、この家は・・・。」

「この家がどうかしたのですか?気味が悪いな。」

「いや、この家にはいつから・・・。」

「あなたたちは、何者ですか? もう帰ってください。」

「いや、この家は私の家なんだけど・・・。」

「なにを言ってるんですか。おかしいんじゃないか?」

「この家は俺の家だ。」

「もう帰ってください。変なことを言うと警察を呼びますよ。」

バタン っとドアが閉まった。

何が何だか分からない。

この家は俺の家のはず・・・なのに。

出てきた男は自分の家のように振る舞っている。

警察?警察に話してみようか?

「ひろみ、どうする。警察に行ってみるか?」

「いや、まずは神崎さんに話を聞いてみましょうよ。何か手違いがあったのかもしれないし?」

「手違い?手違いって何だ?こんな、俺の家に他人が住んでるんだぞ?どんな手違いがあったらこんなことになるんだ。」

「だから、訳がわかんないんで、神崎さんに聞いてみようってのよ。」

「来週は引っ越しだぞ。そんなんで間に合うのか?」

「すぐ、電話してみましょう。この辺に公衆電話はある?」

公衆電話を探し、神崎に電話をした。

会社に、神崎は不在だった。

連絡をくれるよう伝言して。俺たちは家に戻ることにした。

「いったい、どうなってるんだ。」

「わからないわ。あの家は私たちの家のはずなのに・・・。」

「そうだよな。俺たちの家なんだよな。間違いなかったよな。」

「とにかく、神崎さんに話を聞かないことには動きようがないじゃない。」

「そう・・・かな。話を聞いてどうにかなるのか?」

「そんなのわかんないわよ。私も頭の中がぐちゃぐちゃで・・・。」

ひろみは泣き出してしまった。

こっちも泣きたいくらいだが、車の運転があるので、冷静になるようつとめた。

ひろみは泣き続けている。それからは一言の会話もないまま、家に着いた。

家に着くと神崎からの連絡が来ていた。連絡先の電話番号を知らせてくれていたので、すぐにかけ直した。

神崎に事情を説明したが、神崎にも訳が分からないらしく、今日明日で確認して連絡をくれることになった。

ひとまず、来週の引っ越しは延期だ。

こんな状況では引っ越せるわけがない。神崎の連絡を待って考えることにしよう。

とにかく、何が何だか分からない。

両親にも状況を説明して、待つように言った。

どうなるんだ。どうなってるんだ。

ひろみもとても混乱しているようだ。

明日は仕事だが、とってもそんな場合ではない。

皆は寝たが、俺は寝られず。考えても分からないことを考え続けていた。


そして、夜が明けた。

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